渡辺順三『短歌的自叙伝 烈風の中を』によると、
前にも述べた通り、『プロレタリア短歌集』の編集に五島(茂)、前川(佐美雄)、柳田(新太郎)などが参加したことで戦線統一への機運をつくったが、もう一つそれを促進する上に役立ったのは、『現代文芸』という雑誌で「口語歌座談会」というのが企画された。それはこの年(昭和四年)六月で、出席したのは田辺(駿一)、前川、浅野(純一)、渡辺でそれに山田清三郎、岩永胖、林田茂雄であった。『現代文芸』は本郷白山坂上の電車通りにあった素人社という小さな古本屋で出していたもので、林田が編集をしていた。(略)
統一促進のためには林田の骨折りも少なくなかった。そしてこの「口語歌座談会」の席上でこの話がでて、その場で合同のための委員会をつくり、別室で田辺、前川、坪野(哲久)、浅野、私などでいろいろ相談した結果、プロレタリア歌人同盟の結成が大体まとまったと思う。
『プロレタリア短歌集』は、渡辺の編集で前田隆一の紅玉堂書店*1から昭和4年5月刊行。林田*2は、上記の経緯もあって、同年9月創刊のプロレタリア歌人同盟の機関誌『短歌前衛』の編集兼発行人を引き受けることになるが、5年3月号から発行所は難波英夫のマルクス書房*3に移ることになる。