小谷野敦氏のブログ「猫を償うに猫をもってせよ」の「久米正雄伝補遺」によると、『現代文藝』昭和2年3月号(素人社)の「文壇近頃のこと(二)久米正雄氏剽窃事件批判」の出席者は、安藤盛・松本清太郎・鳴海四郎・金兒農夫雄の四人だったという。このうちの鳴海について、「鳴海四郎は、アメリカ演劇の研究者かと思ったが、1917年生まれなのでこの時は十歳、同名異人である。しかしそうなると正体探索は困難であるから、オタどんに任せる」とあった。いや、任されても困るのだが、『日本近代文学大事典』に出ている人だったので、報告しておこう。
林田茂雄 はやしだしげお 明治四〇・一・一五(1907〜)評論家。熊本県生れ。熊本第二師範中退。大正一三年上京、出版社等の仕事につきながら鳴海四郎の筆名で「文学界」ほかに戯曲や小品を投稿、同時に階級闘争に投ずる。昭和五年、プロレタリア科学研究所事務局員となり「ナップ」「マルクス主義芸術」などに評論を発表。翌年第二無産[者]新聞(七・四から最初の活版「赤旗」に解消)印刷部員となり地下活動に入る。七年九月検挙、六年間非転向のまま下獄。(略)
林田と素人社の関係については、『近代日本社会運動史人物大事典』に、「素人社という出版社に住込みで編集出版業務に5年間従事」とある。林田は『文化評論』1972年6月号に「難波英夫さんの歌」を執筆しているし、yukunokiさんの好きそうな人だなあ。
(参考)「金児農夫雄の素人社と『現代文藝』」(8月9日)
「関根喜太郎と高橋新吉」(2008年10月25日)
難波英夫については、「雀隠れ日記」の「この頃の東京」、「マルクス書房」、「難波英夫の道草」、「ワシラノシンブン」
追記:林田は、『20世紀日本人名事典』によると、平成3年1月28日没。
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