小谷野とん氏の里見とん伝によると、里見は「編輯者や、出版社や、一般世間に対して、一番威張つた−といふ感じを与へた」と評されたことがあるという。また、『中央公論』の里見担当編者者が、無礼な編集者だと里見から苦情を言われ、降ろされたこともあるという。そこで今回の話題は、里見に怒られたもう一人の編集者の話題。
『木佐木日記第一巻』によると、
大正14年11月30日 Y君は高野氏*1から里見氏のことを言われると、里見氏の都合を聞いてからすぐ出かけたようだったが、やがて帰ってくるとカンカンになってひとりで怒っていた。事情を聞くと、さっきY君が里見氏に電話をかけたとき、自分が電話口に出ないで、女の子に電話をかけさせて、里見氏を呼び出しておいて、里見氏が電話口に出てから、Y君がはじめて出てきて里見氏の都合を聞いたのがいけなかったらしく、里見氏はY君の顔をみるなりその非礼をきびしくとがめ、原稿のことなど全然言い出す機会を与えなかったので、Y君はほうほうの態で帰ってきたが、皆の顔をみたとたん急にムカムカ腹が立ってきて、ひどく怒っているのだということがわかった。
猫の手も借りたいくらいような状況だった*2ので、新人のY君が催促に行かされたという。木佐木もこの後に書いているが、これは明らかにY君が悪く、里見が怒るのももっともだろう。馬鹿正直すぎて一番威張っていると思われたことは、個々のケースに当たれば、相手側に主たる原因があることも多いのだろう。
なお、里見が「私を誰だと思ってるんだ!」と怒鳴ったかは不明である。
(参考)「猫を償うに猫をもってせよ」
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『ダ・ヴィンチ』は「図書館で、恋をする。」特集。誰ぞも在職中はいい話があったかすら。