神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

手塚治虫『新寶島』四十万部発行伝説の謎


中野晴行『謎のマンガ家・酒井七馬伝』は、手塚治虫『新寶島』の初版・再版について、刷れば刷るほど磨耗し、四、五千部も刷ると使い物にならなくなる描き版で印刷されているから、四十万部も発行できたはずがないと疑問を呈した。これは、「書物蔵」でも言及されていたね。


この『新寶島』四十万部発行伝説の謎について、新たな説が登場している。二階堂黎人「僕らが愛した手塚治虫」第54回(『本の窓』11月号)によると、竹内オサム手塚治虫 アーチストになるな』が、現存する『新寶島』の初版、再版合わせて七種類の異本について、パソコンとスキャナーでページを細かく比較した結果、描き版と、描き版を元にした写真製版の異本があることが判明し、写真製版なら、大量に印刷が可能で、四十万部発行もあり得たのではないかと推察しているという。


二階堂氏は、自分は、かつて戦後の紙不足の状況下では、四十万部は眉唾物だろうと指摘したが、この竹内氏の研究を踏まえ、印刷所が複数にわたることに注目し、刊行元の育英出版は、初版の売れ行きの良さから複数の印刷所に、ほぼ同時に再販の印刷を発注したのではないかという推理を提示している。


芸術新潮』も手塚治虫特集だすね。

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日経によると、岩豪友樹子脚色により、江戸川乱歩の初めての歌舞伎化として「人間豹」が、国立劇場で11月3日〜26日上演されるという。←大分前から話題になってたみたい。