『明星』10号(明治34年1月1日)所収の「露伴雑談」によると、
近頃大和田の『鐵道唱歌』が余程流行して居るさうだが、あれと弦斎の小説は明治の二大傑作だらう、批評家はさう云ふものを捉へて議論するがよい。
露伴が明治の二大傑作の一つという弦斎の小説とは、やはり『日の出島』のことだろうか。
(参考)この露伴の談話については、鴎外が明治34年1月27日頃とされる母峰子宛書簡で次のように言及している。なお、「お君さん」は小金井喜美子(本名・きみ、別称・君子)のことと思われる。
○明星といふ雑誌は與謝野鐵幹といふものゝ編輯にて紙の好きと画の美しきとは大したものなれど文章はつまらぬものに候此度鐵幹より投書せよとて雑誌をおくり来候故始て一見仕候鉄幹には返書のみ遣し候お君さんの露伴が大和田と弦斎との両傑作云々といひしとの話も明星中に相見え候