神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

 日本国語会に結集した人達


安田敏朗金田一京助と日本語の近代』(平凡社新書)にチラリと登場した日本国語会。メンバーについては、6月12日に紹介した。


森本忠『僕の詩と真実』によると、国語国字改良運動に対抗すべく同会に集まった人には、法政大学教授の大西雅雄、国学院の松尾捨次郎[ママ。正しくは松尾捨治郎]教授、浦和高校教授の藤田徳太郎、林古渓翁、大法輪社主石原利明[ママ。正しくは石原俊明]らもいた。林については、

いつか、「昔は私はこれでも“新仏教”に関係したり、ローマ字論を唱へたりしたもんですよ」と述懐してゐられたことがあつた。


日本国語会のメンバーに鈴木大拙高楠順次郎高島米峰がいるのは、林の関係だったか。それと、漱石門下の松岡譲の名があるが、松岡は昭和7年秋から約一年間、高楠主宰の『現代仏教』の編輯主幹をしていたというから、松岡もこの仏教関係者のグループに属するか。


森本は、岡田道一*1についても書いていて、

医学博士岡田道一といへば、よく薬品の新聞広告などに推薦者の名で出てくるおなじみの有名な人なのだが、私は売名家のインチキ医者位にしか思ってゐなかった。ところが会ってみるとまじめなクリスチャンで(藤田徳太郎氏もクリスチャンでしかも岡田博士と教会も同じ番町教会だといふのは奇縁であった)ちょっと風変りではあるが一見識があり、そのきまじめさにユーモアを感じさせる人だった。特に左横書きには熱心な反対論者で、「左横書は変態性欲なり」といふ講演をして世間を驚かせたこともあった。


「左横書は変態性欲」だったらしい(笑
岡田については、平井昌夫『国語国字問題の歴史』も書いていて、

松坂忠則の『国字問題の本質』に国定文字は一、〇〇〇字から二、〇〇〇にとどめ、法律もこれによる、憲法は当分そのままにしておくという一節のあることを、岡田道一が新聞の投書欄(『朝日』九月二日*2)に、神聖不磨の大典を冒涜するものとして論難した。(後に告訴したという話もある。)


とある。「左横書反対同盟」を設けたともあるので、相当アグレッシブな人だったようだ。


(参考)林古渓と林竹次郎は同一人物のはずだが、平井が挙げている日本国語会の創立発起人の名簿では、両方の名前が書かれている。

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『本の話』9月号を見てたら文藝春秋から刊行予定の本として、西村賢太『小銭をかぞえる』のほか、太田あや東大合格生のノートはかならず美しい*3というのも出るらしい。「かならず」とあるので、猫猫先生のノートも美しかったということになるが、ほんまかいな・・・

*1:7月27日参照。鬼塚明治5月25日参照)とともに、日本国語会では創立準備委員で理事候補であった。

*2:昭和17年9月3日付け夕刊に「国字とカナ」を寄稿。

*3:昨年3月6日に言及した記事と関係ありか。