神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

幸徳秋水と福来友吉の催眠術書


大逆事件により拘留中の幸徳秋水堺利彦明治43年11月21日付け書簡*1に、福来友吉博士のものと思われる催眠術書*2が出てくる。

△字書は二つ同時に来た。一つは早速君を宛て宅下郵送を願つてある。同時に福来博士の心理学とアナトールフランスのペンギンアイランドをも送る。此二つは東條へでも叩き売て郵税と電車賃にしてくれ玉へ。但しフランスは流行児だから一度読て見玉へ。中々皮肉で面白い。


「東條」は神保町の東條書店か。「福来博士の心理学」とは、福来友吉の『催眠心理学概論』(成美堂、明治38年6月)か、『催眠心理学』(成美堂、明治39年3月)のことか。幸徳が、福来の催眠術書を持っていたとは驚き。


幸徳が拘留され、処刑されるまでの期間は、千里眼騒動と重なるが、事件について知っていただろうか。明治44年1月19日“千里眼御船千鶴子自殺、同月24日幸徳処刑。


(参考)明治43年12月1日付け堺宛書簡には「堺兄には字書と心理学、ペンギンアイランドの三冊は未た届かぬだらう。昨日伺つたら願意は徹底してるとの事。郵送はいつになるか分らぬ。御面倒だが是も藤間に君の委任状を与へて受取らせてくれ。左すれば直ぐことが運ぶ」とある。結局、堺に福来の書は渡ったのであろうか。

*1:幸徳秋水の日記と書簡 増補決定版』(未来社、1990年4月)

*2:催眠術書と決め付けてしまったが、ma-tango氏の教示により、催眠心理学でない心理学の書も書いていたことが判明。