神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

谷崎潤一郎の妻千代と辰野隆


『随筆サンケイ』昭和34年7月号の「随筆寄席」の座談会は、辰野隆徳川夢声林髞のレギュラーと大下宇陀児

辰野 (略)わたくし当時法学士になったばかりなんで、中禅寺湖を見に行こうと、悪い仲間四、五人と前橋まで行ったら、汽車がとまっちゃったんだ。(小鼻をふくらませ)発車まで二時間か三時間あるから、前橋で一つ芸者買でもしようかてんだナ。そこで前橋に行ったんだ。そこにちょいといい芸者がいまして、「穴倉に住む古ネズミ」を教えてくれというので教えてやった、
いい芸者と思ったのが、やがてまわりまわって向島に出てたんだね。それが谷崎潤一郎の嬶になっちまんだよ、しまいに。
(略)
辰野 ええ、そうすると三好達治という詩人がいますわ、東大仏文学出身で。彼が佐藤君の姪御さんと結婚して、神田の支那料理屋で披露宴をした。僕もそれに出席したし、佐藤春夫君もそこに来てましたが、佐藤君とだんだん話をしてるうちに、佐藤君が、「わたくしの家内は、あなたを知っておりますよ」というだね。分からないや、こっちには。・・・・だんだん話してみると、前橋で芸者をしてた人が、向島に行き、それと谷崎が仲良くなって同棲して、それを佐藤君にゆずったということが分って、「ああ、さようでござんすか」といってね、それではじめて事情が分った。


谷崎の最初の妻千代は、萩原朔太郎も知っていた*1という。偶然のことだが、世間は狭いというべきか。

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『文藝』夏号の「BOOK REVIEW」に佐藤康智氏による安藤礼二『近代論』の書評(?)あり。ちと凝り過ぎか。

*1:3月3日参照