神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

日本における「ムー大陸」受容史


藤野七穂偽史と野望の陥没大陸“ムー大陸”の伝播と日本的受容」*1によると、日本で最初にチャーチワードの「ムー大陸」が紹介されたのは、昭和7年8月。三好武二により『サンデー毎日』の同年8月特大号と10月2日号で紹介されたという。同論考には漏れているが、この直後にムー大陸に言及している人がいるので補充しておこう。


友清歓真全集』第5巻*2所収の「日乃御鋼」によると、

英国人チヤーチ・ワード氏の多年の研究によると、『世界文明発祥ノ国土ハ今ノ太平洋中ニアツタ(南アメリカ洲位ヰノ大キサ)一大国土デアツテ、ソレガ約一万三千年前ニ噴火ト地震トノ為メニ六千余万ノ住民ト共ニ海底ニ陥没シテ了ツタモノダ』と云ふ。『ソレハ「舞」*3トイフ光輝アル文化ヲ有シタ国土デ、印度ヤ埃及方面ノ文明ナルモノモ皆ナ此ノ「舞」ノ母カラ派生シタモノダ』といふのである。(略)
わが紀記の創世記の如きものは、此の『舞』の国の存在を表面認めて伝へて居らぬこと勿論であるが、この英国の篤学者の研究が学界から承認される日が来ても、何の不都合も感ずるものではないのである。先年来いつも申すことであるが、わが神典の古伝は昔時の日本人に必要にして又た認識し得られる範囲に於て伝へられてあるので、そのことをよく腹に入れて物事をみねばならぬ。私一個の考へから云へば此の『舞』といふ国の存在学説が将来一層権威を生じて来た方が、われゝゝの信念を裏書するには却て有益であらうとさへ思へ、殊に其の『舞』といふ国号の名義には多大の興味をもつものであるが、これ以上のことを書くと叱られるから此の問題はこの程度にしておく。
(略)
−昭和七年十月(中略)友清磐山しるす−


記紀に記載がなければ、記載のある古史古伝を「発見」していくことになる戦前のトンデモない歴史については、既におなじみのとおり。


追記:わが畏友のブログの更新がされていないのは、まだどこぞに潜伏中かすら。おとろし、おとろし。

*1:『歴史を変えた偽書』ジャパン・ミックス、1996年6月

*2:参玄社、昭和49年7月

*3:「ム」とルビ