ヨコジュンさんのお気に入りで、SF詩人として著名な中山忠直は、日ユ同祖論者でもあったのだが、トンデモの領域を超えた妄想の世界に入り込んでいたようだ。
天羽英二(あもうえいじ)の日記によると、
昭和20年4月9日 沼津 中山忠直ナル狂気染ミタモノヨリ書物*1、印刷物送附シ来ル、小生ハ猶太「アモン」ノ子孫、猶太接近の運動を起せと言ふ。
5月3日 皆見健治なる者、中山正[ママ]直の手紙持参 中山正[ママ]直は、小生は「アモン」ノ後裔 猶太の子孫、畑俊六など然り、猶太連盟を作れといふ
天羽に「狂気染ミタモノ」と言われてしまった中山だが、戦後執筆したものを見ても確かにその感はある。
『共通の広場』*2(昭和27年6月号)の「人類に呼びかける」では、
天照大御神とは聖母マリヤで日本の最初の天皇は神武天皇でなくハクニしらすスメラ・ミコト(御肇国天皇)と記されている崇神天皇で、このお方はキリスト(救い主)と云はれて来た人間イエスが殺されてから生れたイエスの遺児で、天皇は、イエスの理想の後継者にあらせられる。
この超トンデモない内容の文章を読んで、私は八切止夫を思い浮かべてしまった。
同誌昭和27年9月号の「天皇譲位論」では、
佐伯ハクシ*3に次ぐふるい研究家わMr.NAGAO Sin-Zi(長尾眞治・羊舟と号す)で、同じく明治41年の『福音新報』に『日本民族人種論』としてオオヤケにされた。ソレラをまとめて1942(昭和17)に『CHRIST チシキ』のフロクとしてだされたのを、イクサがすんでから『CHRIST SINBUN』のMr.SAITO Kiyosi(斎藤潔)からもらった。
と書いている。この長尾眞治とは、従来の日ユ同祖論では未知の人物。中山の言っていることが本当とすれば新発見の事実だね。