中山忠直(中山啓)のSF詩『火星』*1に関する噂について書いた文献があった。
「昭和漢方の先駆者中山忠直」(『大塚敬節著作集』第1巻、春陽堂、昭和55年4月)によると、
この中山啓が自分の詩集を出版してくれといって、新潮社の玄関に、三日間坐り込んだという話を聞いたことがあったが、私をしていわしむれば、この『火星』はたいした代物ではなく、その当時、新潮社から出た『佐藤春夫詩集』*2や萩原朔太郎の『純情小曲集』や『青猫』などと比べると、まあよくも新潮社が出版したものだと感心する程度のものである。(略)
彼ははじめに木村博昭と手を握ったが、やがて別れた。沢田健とも手を握ったが、やがて別れた。桜沢如一とも手を握ったが、やがて別れた。なぜ、彼は次々と旧友から別れて孤立したのであろう。私はその理由を知らない。しかし彼の性格の中に、何か尋常でないものがあったのではあるまいかと、想像する。およそ先覚者には、異常性格者が多い。彼にも、そうしたところがあったのではあるまいか。(略)
ともあれ、私は彼が、昭和の漢方の復興に尽した功績をみとめることに、やぶさかではない。
追記:国会図書館に『古書店と読者の雑誌』(高原書店編集部編)37号から134号までが所蔵されているんだ(参照:「はほへほ旅日記・書物日誌」)。