「お父さんの龍丸さんによく似ている」
と、彼は英語で話しかけてくる。
そのとき、僕は、ふっと聞いてみた。
「私の父はなぜインドへきたのでしょうか」
すると、スシル・クマールさんはこう答えたのだ。
「あなたのお父さんは、小さいころ、ラス・ビハリ・ボース
から、インドというすばらしい国があるから、いつか行って
みるといいよと、言われたといっていました」
ああ、そうなのか、そんなことがあったのか・・・
ラス・ビハリ・ボースは、インドの独立運動家で、大正四年
(1915年)に日本に亡命してきたとき、茂丸は頭山満らと
ボースを新宿の中村屋にかくまっている。このボースと子ども
のころ出会っていたことが、後に父をインドにむかわせたきっ
かけになったのだという事実を初めて知って、僕はとてもうれし
かった。
『中村屋のボース』(中島岳志著)が、大佛次郎論壇賞を受賞。若手の
研究者の著作が評価されるのは、とてもよいことである。
「大アジア主義」がブームか!!