神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

三密堂書店で表紙に「頒暦證」紙が貼られた『明治十年太陽略暦』(頒歴商社)を


 いつもお世話になっている三密堂書店の100円均一台から『明治十年太陽略暦』(頒歴商社)を購入。発行年の記載はないが、暦の性格から言って、明治9年末の発行だろう。「オタどん、暦なんか買ってどうすんの?」と言われそうである。これはそのとおりで、暦には全く興味がない。買ったのは、表紙に「頒歴證」と書かれた証紙が貼られ、消印(頒歴商社)が押されていたからである。

 明治期の出版者による偽版防止策を類型化・分析した稲岡勝『明治出版史上の金港堂:社史のない出版社「史」の試み』(皓星社平成31年3月)39~42頁では、5つの類型のうち「蔵版之証などとした証紙(印紙)を貼付した上、消印を施したもの」を3番目に挙げている。そして、「貼付する証紙の位置は、普通は奥付であるが、見返しや標題紙のこともあり、余り厳密ではない」とある。表紙に貼付してあるのは珍しく、初めて見た気がする。
 また、稲岡先生が挙げた例は明治16年~27年のもので、明治9年発行と思われる本書は最初期の例かもしれない。証紙の図柄には肖像、自然の風物、書物、文具、地球儀など学問に縁のある文物などが多いとされていて、本書の場合も地球儀を干支の動物(子、丑、寅、卯、辰、巳)の描かれた輪が囲む図柄になっている。
 国会図書館サーチで検索すると、国会図書館明治10年版としては証紙が貼付された本と剥がされた本を所蔵し、明治9年版としては証紙が貼付されず、「暦局檢査之印」が押されている本を所蔵していることが分かる。これで、少なくとも頒暦商社の『太陽略暦』については、明治10年版から偽版防止策としての証紙が導入されたと判明した。
 追記:明治10年版からの頒暦證の貼付については、ネットで読める荒川敏彦・下村育世「戦後日本における暦の再編(3)ー「偽暦」の発行部数と取り締まりについてー」がある。