神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

満洲国治安部発行の外邦図ー満洲国治安部の地図はいつ発行されたのか?ー


 今年も下鴨納涼古本まつりでは、竹岡書店の3冊まで500円(最終日は8冊まで500円)が好評でした。3日目だったか、戦前の地図が数枚混ざり込んでいた。その中に満洲の地図があって、これは貴重そうだなと思いつつ、地図には興味がなく買ったことがないので、戻そうかと思った。しかし、そのうちの1枚に「満洲國治安部」と押されていて、面白そうなので3冊のうちの1冊にしてみた。残りの満洲の地図は、5日目に上洛した書物蔵氏の手に渡った。
 入手した地図は、満洲里周辺の50万分の1、昭和7年製版、同年12月大日本帝国陸地測量部発行である。発行所名に重ねて満洲国治安部とスタンプが押されている。これをどう解釈するかは、難問である。私は満洲国治安部旧蔵の意と解して買ったのだが、むしろ発行所の変更を表しているのかもしれない。

 満洲国の成立は昭和7年3月、治安部は『満洲國警察史』(満洲国治安部警務司、慶徳9(昭和17)年9月)74頁によれば、昭和12年7月設立である。アジア歴史資料センター治安部|アジ歴グロッサリー」も同様の理解をしている。ところが、国会図書館サーチによると、国会図書館昭和7年12月満洲国治安部発行の地図を所蔵していて、注記には「大同元年製版」とある。大同元年は昭和7年に当たる。同様の地図は、広島大学図書館も所蔵している。治安部の成立が昭和12年というのは動かないと思われるが、満洲国や外邦図に詳しい研究者の方は、どう解明してくれるかしら。
 なお、小林茂編「近代日本の地図作製とアジア太平洋地域:「外邦図」へのアプローチ』(大阪大学出版会、平成21年2月)14頁によると、『旧満州五万部の一地図集成』(科学書院、昭和60年)収録の地図について、陸地測量部によるものが多いが、一部に旧満洲国治安部によるものもみられるとあり、治安部が地図を発行していたこと自体は間違いない。