神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

旧山口吉郎兵衛邸(現滴翠美術館)を設計した安井武雄と南木芳太郎


 平成29年12月に中之島図書館で開催された「建築家・安井武雄の想像力 近代大阪の精華」のリーフレットが出てきた。記憶がはっきりしないが、安井が設計した大阪倶楽部大正13年竣工)、高麗橋野村ビル(昭和2年竣工)、大阪ガスビル(昭和8年竣工)などの設計図、スケッチ、写真、パーツが展覧されたようだ。
 さて、安井武雄の研究者は我等が郷土研究雑誌『上方』を主宰した南木芳太郎の日記に安井らしき建築家が出てくることを御存知だろうか。『南木芳太郎日記一』(大阪市史料調査会、平成21年12月)に次のような記述がある。

(昭和五年)
十一月十二日
(略)花房君*1来り人形を安井氏に観せる事に付き協議す。(略)
十一月十三日
(略)花房君建築家安井氏を伴ひ来る。玩具其他を観せて蒐集の方法など話す。(略)

 ただ、安井武雄が人形蒐集をしていたかは不明である。『大衆人事録第十版』(帝国秘密探偵社・国勢協会、昭和9年11月10版)に立項された武雄の趣味は、「絵画読書スポーツゴルフ」である。武雄の周辺にいた人物で人形蒐集をしていたものとしては、山口吉郎兵衛がいる。武雄は山口邸(昭和8年竣工)の設計をしていて、現在山口が蒐集した陶器、人形、かるた、羽子板などを展示する滴翠美術館となっている。山口との関わりの中で、武雄も人形蒐集を行っていた時期があるのだろうか。
 

*1:不詳。『大阪現代人名辞書』(文明社、大正2年11月)に花房古堂という画家が立項されている。明治12年大阪生まれで、父親文治郎は月耕と号した画家である。骨董を趣味とし、天王寺に住んでいた。一応候補にしておこう。