神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

江戸川乱步「二人の探偵小説家」(「空気男」の原題)掲載の『旬刊写真報知』ー『江戸川乱步大事典』(勉誠出版)への補足ー


 やや高価であったが、中相作編『江戸川乱步年譜集成』(藍峯舎)を入手した。大正15年の条の1月及び2月に小説として「二人の探偵小説家①~④」が挙がり、1月5日に「旬刊誌で初めての長編連載が始まる」とある。この「二人の探偵小説家」を連載した「旬刊誌」が、何度か話題にした『旬刊写真報知』(報知新聞社出版部)である。
 「旬刊写真報知」でググると、国会図書館のレファレンス回答「雑誌『旬刊写真報知』(発行:報知新聞社出版部)の第4巻1号~3号、5号の所蔵機関を調査してほしい。こ... | レファレンス協同データベース」が1番目にヒットする。「二人の探偵小説家」が連載された同誌4巻1~3号、5号の所蔵機関を知りたいというものである。結局、どこにも無いようだとされている。この回答に補足しておこう。
 「美術図書館横断検索」により、江戸東京博物館図書室が3巻4、6、9号、4巻5、10、12号を所蔵していることが分かる。照会のあった4巻5号が含まれていますね。また、個人蔵ではあるが、『江戸川乱步全集』2巻(光文社、平成16年8月)の「解題」で「空気男」(「二人の探偵小説家」の改題)について、底本にした平凡社版乱步全集と初出誌『旬刊写真報知』や春陽堂版乱步全集との校異を書いた新保博久氏も所蔵していると思われる(追記:新保氏よりTwitterでミステリー文学資料館の蔵書に拠った旨御教示いただきました。ありがとうございます)。
 実は、私も当該『旬刊写真報知』を所蔵している。「日本の古本屋」で古書鎌田から入手。写真を挙げた4巻2号,大正15年1月15日、同巻5号,同年2月15日である。4巻3号も出品されていたが、コレクターではないので残しておいた。その後、売り切れている。乱步の他の作品(「盗難」)や森下雨村の小説が載った号が軒並み売り切れているので、多分同じ人が押さえたのであろう(誰だ?)。
 乱步は、この「二人の探偵小説家」について『探偵小説四十年』などで掲載誌の廃刊により中絶したと回想している。日下三蔵編『合作探偵小説コレクション』2巻(春陽堂書店、令和4年12月)の「編者解説」、落合教幸・阪本博志・藤井淑禎、渡辺憲司編『江戸川乱步大事典』(勉誠出版、令和3年3月)の「報知新聞」(佐藤卓己執筆)や「写真報知」(片山慶隆執筆)もこれを踏襲している。しかし、前記新保氏が「解説」で「実際には「二人の探偵小説家」中絶後も雑誌は続いている。ただ誌面刷新のため小説が重視されなくなった*1ので、すんなり中絶を受諾されたのだろう」と書いているとおりである。実際に4巻6号以降も続いたことは、江戸東京博物館図書室所蔵の4巻10、12号や古書鎌田が同巻17号まで出品していることで確認できる。
 『旬刊写真報知』は挿絵画家も重要であることは、「『旬刊写真報知』(報知新聞社出版部)掲載の挿絵に注目! - 神保町系オタオタ日記」で言及したところである。4巻2号の「二人の探偵小説家(二)」は松野一夫、同巻5号の「同(四)」は太田雅光の挿絵である。(一)や(三)の挿絵は誰だったのだろうか。

*1:『旬刊写真報知』4巻5号に「従来好評を博してゐました本文読物は、読む記事よりも、見る記事を本位とする主義から、これを廃して代るに面白い科学や地理探検の写真記事、肩のこらない漫画、絵小説の新しいものをグラビア版に収容し、講談は元通り毎号皆様の御機嫌を伺ふつもりです」とある。