神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

京都帝国大学附属図書館の兵働竹酔

冨山房の『国民百科大辞典』14巻(昭和13年4月)の「寄稿家名鑑」には、数名の図書館学・書誌学関係者が見える。

庄司浅水 [製本・書籍]
田中敬 大阪商大図書館嘱託 [図書学]
長沢規矩也 法政大学講師 [書誌学(支那)]
弥吉光長 丸善株式会社 [図書館]

著名な人ばかりだが、実は無名の人が1人存在した。

兵働竹酔 京都帝大図書館員 [人名]

兵働が館界に残した足跡は皆無と思われるが、判明した経歴をまとめると、

明治?年 佐賀県
明治45年 早稲田大学哲学科卒。同期に島中雄作(『早稲田大学校友会会員名簿』大正14年)
大正2年 京都帝国大学文科大学文学科(選科)入学
大正8年 同英語学英文学専攻卒業(『京都大学文学部卒業生名簿』昭和30年)
昭和3年5月 京都帝国大学附属図書館に採用(『京都大学附属図書館六十年史』)
昭和15年7月 同退職(同上)

ざっさくプラスでは「天国の欄干にて」『新女界』大正3年12月、「熊野の海」『六合雑誌』大正5年8月など3件ヒット。更にグーグルブックスによると、『『新人』『新女界』の研究:二〇世紀初頭キリスト教ジャーナリズム』(同志社大学人文科学研究所、平成11年)に「兵藤(ママ)竹酔(佐賀県)」の入信に関する記載があるので、キリスト者だったらしい。『国民百科大辞典』では各界の学者・研究者が専門分野を担当する中で、兵働は図書館員らしさを発揮して、学際的な「人名」を担当。優秀な図書館員だったのだろう。もっとも、大辞典で実際に執筆した項目に当たる必要がある。