神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

竹中郁の住所が書かれた『働く人の詩』2号(新大阪新聞社)

12月の全大阪古書ブックフェアで『働く人の詩』2号(新大阪新聞社、昭和22年7月)を300円で。1階奥の店で、全品値付けされておらず、値段は聞かないとわからないという露天の骨董屋みたいな店であった*1。レジもここだけ合同レジではなく、単独のレジ。足立巻一が編集した同誌については、「近藤計三の詩誌『狙撃兵』をめぐる足立巻一のやちまた」で言及したばかりなので、会場で目にして驚いた。恐る恐る値段を聞くと、300円というのでホクホクと購入。
2号の内容だが、巻頭(表紙)に近藤東「革命の文学と文学の革命」が掲載されているほか、井上靖「元氏」、小野十三郎ムンク」、須藤和光「働く人の詩の位置」、壺井繁治「新らしい期待」、清水正一「ひろばの詩」、竹中郁「モヂリアニとルッソオ」なども掲載されている。本誌は三人社から平成28年に『山河復刻版別巻 戦後大阪詩運動資料』として復刻版が刊行されていて、それによると創刊号は昭和22年4月発行、編集委員として足立巻一、須藤和光、妹尾太郎、中川信夫、森上多郎ら23人の名が挙がっている。また、宇野田尚哉「別巻「戦後大阪詩運動資料集」解説ーー須藤和光に触れながらーー」(『『山河』解題・回想・総目次・執筆者索引』)によれば、「黒崎貞次[ママ]郎の積極的関与のもと、須藤和光と足立巻一(一九四六年一二月入社)が編集等の実務を担ったものと思われる」とある。
ところで、入手した2号の表紙には「神戸市須磨区離宮前町七七 竹中郁」と鉛筆で書かれている。痕跡本である。この住所は『竹中郁全詩集』(角川書店、昭和58年3月)の年譜によると、昭和20年12月入居し、終生の住居となった場所である。『痕跡本のすすめ』の古沢和宏氏に倣って推理すると、誰かに連絡先を聞かれた竹中がたまたま手元にあった本号に記入して渡したものかもしれない。もっとも、竹中の筆跡を知らないので、推理の保証はできない。そのうち、ヨゾラ舎のオタどん蔵書放出コーナーに出しちゃうので、関心のある人は買ってね。
追記:ゆずぽんさんの蔵書に収まりました。

痕跡本のすすめ

痕跡本のすすめ

*1:追記:「升谷」でした。