『二級河川』16号(金腐川宴游会)をいただいた。特集は「必殺必中グルメ漫画稼業」。特集の他には、堀川秋海「四分割・江見水蔭伝」、トム・リバーフィールド「戦時の企業整備により誕生した出版社一覧(附・被統合出版社名索引)」など。後者の一覧がとても有用である。
戦時中の出版社統廃合については、既に福島鑄郎編著『戦後雑誌発掘ーー焦土時代の精神ーー』(日本エディタースクール出版部、昭和47年8月)に「企業整備後の主要新事業体および吸収統合事業体一覧(昭和十九年三月二十一日現在)」がある。『出版弘報』(昭和20年2月21日)掲載の172社のうち吸収合併の判明した147社について、社名、代表者名、被統合出版社名、担当部門を記したものである。統合後の新事業体について五十音順に配列されているが、被統合出版社の索引はなかった。
今回のリバーフィールド氏の一覧は172社について、社名の五十音順に代表者名、被統合出版社名、担当部門、所在地を並べ、更に被統合出版社名の五十音順索引も作成されている。特にこの索引が便利である。
私は研究者ではないが、この一覧に若干補足しておくと、
1 昭和19年の企業整備だけ言及しているが、少なくとも京都では昭和18年に第一次の企業整備が行われたようだ。『京都出版史 明治元年ー昭和二十年』(日本書籍出版協会京都支部、平成3年3月)の「出版社小史」によれば、
大雅堂・・・昭和18年企業整備により教育図書を母体に芸艸堂などが統合。19年に第二次統合として工芸美術聚英刊行会*1などが加わる。
東光書林・・・昭和18年企業整備による法蔵館、藤井丁字屋*2などの統合会社として創立。19年第二次企業整備により法蔵館グループに全人社、平楽寺グループが統合*3。
一条書房・・・昭和18年1月企業整備により河原書店、臼井書房などが統合。同年末頃更に大八州出版と第二次統合合併。
全人社・・・昭和18年9月企業整備により永田文昌堂、興教書院などが統合。昭和19年第二次企業整備で東光書林と合併。
大八州出版・・・昭和18年企業整備による統合で柳原書店を母体として創立。統合されたのは、河原書店、臼井書房*4など15社。リバーフィールド氏の一覧*5では、柳原書店、一條書房など16社。
『京都出版史』の記載も相互に矛盾する記載があり、あまり当てにならないが、昭和18年に第一次の企業整備があったことはわかる。
2 福島の一覧には、京都印書館(代表者中江源、立命館出版部など7社)と京都出版社(代表者中川小十郎、人文書院など6社)があがっているが、被統合出版社は立命館出版部以外は同じである*6。リバーフィールド氏の一覧では京都出版社*7のみあがっている。実際に創立されたのは、立命館出版部など7社が統合した京都印書館(昭和19年1月の日本出版会宛統合申告書では代表者中川小十郎*8)である。これについては、『立命館百年史紀要』1号(立命館百年史編纂委員会、平成5年3月)の西岡成幸「立命館出版部の沿革」に詳しい。
3 福島の一覧に大成出版(代表者白勢正衛、大東亜社など5社)があがっているが、これはリバーフィールド氏の一覧の少国民図書(代表者白勢正衛、大東亜社など7社)に相当するようだ。