所蔵する内務省検閲原本では最も古いもの。これまで紹介した内務省印は丸印だったが、これは横長の長方形。誰ぞこと書物藏氏が押収した雑誌の中に同じ印があった気がする。記載は、「内務省/9.3.17/正本」。漢字の部分は、紹介済の分は右横書きだが、これは左横書きである。「正本」とあるが、「副本」は帝国図書館に交付されなかったようだ。昭和9年3月10日印刷、同月20日発行。と書いて、よく見たら、日付の部分は、紙が貼られて手書きになってるよ(◎-◎;)
印刷・製本が遅れて、発行予定日の三日前までに内務省へ納本できなくなったので訂正したのだろう。ネット上では同月10日発行との情報があるので、流布本は10日発行のままなのだろう。大阪市立図書館が本書と昭和12年改訂増補版を所蔵している。このような貴重な本が400円とは、とは。
本書は、小野妹子の八男が開いた大阪の願泉寺の歴史をたどったもので、「緒言」によると、「知友久保田小塊君の助力を得て」作成したものという。
今回市場に流出した内務省検閲原本の旧藏者はアイヌ関係の資料に関心があったことはわかっていたが、誰ぞが神道に関心があったみたいとつぶやいていたので考えてみると、民俗、宗教にも関心があった人のようだ。なお、本書の最後には「当寺梵鐘之刻銘」があるが、表紙に鉛筆で「鐘銘」と記されていた。