小田光雄氏が「古本夜話108 春山行夫と小谷部全一郎『日本及日本国民之起原』」を書いておられる。厚生閣にいた春山行夫が小谷部の『日本及日本国民之起原』(厚生閣、昭和4年1月)を担当していたという話には驚かされた。そこで、同書関連のネタをアップしてみよう。
今春日本及日本国民之起原(菊版凡五百頁余 参考写真四十枚)と題する新著を 東京厚生閣書肆より発行可仕 目下印刷中に有之候 右は日本が南洋 蛮族より起れり とする謬説を排し 西部亜細亜のタガマ洲より発祥せる 希伯来の神族なりと判断したるものに候間 前著「成吉思汗は源義経也」と同様 御批評の栄に預度偏に希上候
とある。小谷部が批評を求めているのは、『成吉思汗は源義経也』(冨山房、大正13年11月)を刊行した際、吉田が「成吉思汗は源義経也の論駁について」を『北海』2巻3号、大正14年4月(未見)に書いたことや吉田の書簡を『成吉思汗は源義経也 著述の動機と再論』(冨山房、大正14年10月)に掲載した経緯があるためであろう。しかし、前掲書を読んだ吉田は本音を日記に書いている。
昭和4年1月31日 本日、至誠堂より購入して来た「日本及日本国民の(ママ)起原」は通覧するに、例の小谷部式躍動するも実に噴飯にたへぬ。「之助」や「郎」の解など、実に狂。再読の価値なし。
なお、小田氏は、昭和16年に8刷とされているが、6年に8版である。
(参考)「小谷部全一郎『日本及日本国民之起原』が発行10年後に発禁処分になった理由」(6月7日)
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