神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

小林秀雄はデニケンの古代宇宙飛行士説三部作を読んだか

現国の問題に使われた小林秀雄の文章の難解さに泣かされた者としては、丸山眞男よりも小林をひっぱたいてほしいものである(笑)。さて、そんな小林が、エーリッヒ・フォン・デニケンの角川文庫版を所蔵していたと聞くと、驚く人もいるだろう。自分で買ったわけではなく、宇野千代が送りつけたものである。宇野の「デニケンに魅せられて」*1によると、

「星への帰還」に続いて、「宇宙人の謎」「未来の記憶」「太古の宇宙人」と眼につく限りの本を、私は漁って読んだ。(略)私は家へ来た人だけではなく、自分で荷造りして知ってる人のところへ、小包で送りつけたりした。特に小林秀雄さんのところへは電話をかけた。「もしもし、もうお読みになりましたか。」「活字が小さくて、とても読めないよ。」「でも、辛抱して読んで下さい。あなたがどうお思いになったか、どうしても知りたいんです。」しかし、今もって小林さんからは返事がない。

文庫を送ったというから、単行本の『太古の宇宙人』は送らなかったと思われる。それにしても、デニケンの本を送られても小林には迷惑だったことだろう。昭和58年に亡くなる小林だが、死ぬまでデニケンを読むことはなかっただろうが、少なくとも宇野に言われて手に取ったと思うと、ちょっと楽しくなる。なお、宇野の年譜では、昭和49年のこととされている。しかし、角川文庫三部作は同年の発行だが、『太古の宇宙人』は51年発行であり、51年の誤りだろう。

*1:文藝春秋デラックス 古代遺蹟とUFOの謎』(昭和51年7月)