昭和27年3月1日 久米正雄が脳溢血で逝去した。六十歳。ラジオで録音した談話を聞いてゐても、死んだといふ感じがしなかつた。賑やかな好漢だつたが、したしく膝を割つて話すことがなかつた。十年も会はず、時々会ふ機会があればもつとしたしさがある筈だ。四日の告別式には何とかして行きたいと考へてゐる。
3月4日 久米正雄の告別式にどこかに、人にかくれて久米正雄が参列してゐるやうである。たいていの告別式には本人が来てゐる。
室生と久米はそれほど親しくはなかったようだが、どういうつながりだろうか。10年前というと、昭和17年11月の大東亜文学者大会に両者は出席していたようだ。