11月10日に言及した改造社と久米正雄による文学者の日常生活の映画撮影は、猫猫先生が意地悪して(?)教えてくれなかったが、円本全集の広告用だった。武野藤介『文士の側面裏面』*1の「死後」に、
が、かの円本の各社の広告戦の時は、敵も味方も、恰かも資本家の走狗であつたかの如く見えた。その時改造社の考案したのが、久米正雄氏監督撮影と銘打つた「現代文士生活巡礼」の映画である。
労働を体験せる藤森成吉氏と云ふやうなタイトルで、ナッパ服を着た彼が、自宅の庭で植木の枝ツミをしてゐる場面、徳田秋聲氏と順子、等、等、甚だ笑止千万なものであつた。
とあった。正宗白鳥は、死後まで自分の姿がウヨウヨしているのは不愉快だと謝絶したという。より詳しくは、上林暁「青春自画像」*2に書かれている。上林は、島崎藤村、巌谷小波、上司小剣、田山花袋、小川未明の出演交渉に当たったという。そのうち花袋が出演を断った理由が面白いが、省略。現代日本文学全集(いわゆる円本全集)の宣伝のため、久米の監督で、諸作家の日常生活を映画に撮り、全国各地の文藝講演会で上映するという企画だった。上林と同期で改造社に入社した水島治男が文学青年に仕立てられ、各作家を訪問するという趣向で、廣津柳浪・和郎父子、徳田秋聲・山田順子、近松秋江、上司小剣、小山内薫、芥川龍之介、里見とん、佐藤春夫、武者小路実篤らが出演した。正式名称は「現代日本文学巡礼」のようで、こおりやま文学の森資料館が所蔵している。
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今日は黒岩さんの分まで、坂の上の雲第2部を見なければ。