森銑三の『読書日記』は、狩野亨吉による竹内文献批判について言及している。
昭和13年12月28日 午後狩野先生を訪ふ。(略)
一昨年六月号の『思想』に狩野先生の寄せられたる「天津教古文書の批判」の抜刷を借りて直ちに一読す。長慶天皇、後醍醐天皇の宸翰と称するものなど、われらの眼にても一見して贋作たることの知らるれど、その神代文字之巻と称するものを一箇月を費して読みおほせられ、遂にそれらのからくりを明かにせられたるなど、余人の企及すべからざるところ、かかるいかがはしき物を一部の人々の今なほ信じ、また信ぜんとするは何ぞや。
森が畏友と呼ぶ伊藤武雄は、昭和3年3月に竹内文献(天津教古文書)を拝観しているが、森はそのことを知っていただろうか(11月11日参照)。