神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

戦時下の極楽とんぼ(その10)


戦時下、里見とんがまた宴会に出ていた。
広津和郎の「戦時日記」によると、

昭和19年8月29日 本日は横浜の南京町にめずらしく豊富な洋食を食べさせる家があるというのでそこに行く日である。間宮君の学生時分の友人で上野健という若い実業家が案内して呉れるのだそうである。(略)志賀、多ヶ谷両氏の外に小島政二郎君夫妻も既に席についている。(略)今後月に一回ぐらいこの会を開かんとの議起る。上野君の手下にカポネと綽名される男あり。その人物の顔が利くのでかくの如き豊富な料理が出るとの事に、カポネ会と命名しようという事になる。−ちょっと戦争を忘れたのんびりさである。


    9月13日 午後志賀氏来り、十四日の横浜のカポネ会の事で鎌倉の小島君に電話をかけたところ、全部で十名位にして呉れと先方で云っているとの事。今日は山本実彦、梅原龍三郎里見紝の三氏も招いてしまってあるから、人数の割振について相談に来たという。予には別に異存なし。


    9月14日 昼食の際、予突然胸悪くなり、心臓不安を覚え始めたので、晩の横浜行きを中止する旨志賀氏に電話をかける。


「間宮」は間宮茂輔。上野健は、『大衆人事録』によると、神奈川トヨタ販売(株)取締、横浜護謨製造(株)会長秘書課長。明治31年1月東京市生、大正11年慶大理財科卒。古河電気工業社長秘書を経て昭和5年から現職。『一生風塵の中』(永田書房、昭和42年)という著作がある。

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日本近代文学館の「夏の文学教室」については、昨日の分に追記したから見るだすよ。


西尾幹二GHQ焚書図書開封 米占領軍に消された戦前の日本』(徳間書店)。タイトルにつられてあやうく買いそうになる。でも、買わない方がいいかも・・・

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週刊文春』に角田光代岡崎武志『古本道場』(ポプラ文庫)の紹介あり。角田さんは、古本屋だけでなく横浜美術館にも出没しているみたい。→「4人が創る「わたしの美術館」展


新井巌『番町麹町「幻の文人町」を歩く』(彩流社)が出てた。独歩も住んでいたらしい。