神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

幻の幸田露伴日本文学報国会長


戦前、徳富蘇峰が日本文学報国会長に就任しているが、当初は幸田露伴が候補であった。
斎藤茂吉の日記によると、

昭和17年5月22日 ○情報局ノ上田中佐(五部三課長)ヨリ電報アリ、ヨツテ甲田先生ヲ訪ネ、文学報国会々長ノ件ヲ依頼ス。先生、コトワラレル、


    5月23日 ○情報局ニ上田課長ヲ訪ヒ、又翼賛会岸田務[ママ]長、久米正雄氏、井上情報官トモアフ。幸田先生ノ意ヲ伝フ


    6月18日 ○午後日比谷公会堂ノ日本文学報国会ニノゾム。久米氏ヨリ蘇峰先生会長受諾ノ報告ガアリ。ソノホカイロイロアツタ。


この件については、塩谷賛の『幸田露伴』にも記されている。

文学報国会というものができた。情報局の指令にもとづくものである。その会長にと言って役人だの文壇の人だのが幾度もやって来た。露伴に親しいというところから茂吉も頼まれて来た。(略)露伴がどうしてもだめなので露伴の言っていた徳富蘇峰にきまった。わが国が敗れて戦争が終り、こういう役に就いていた人々は汚名を着せられて謹慎させられた。


もしも露伴がうっかり会長を引き受けていたら、日本文学史上における評価が変わっていたのだろうね。

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創立150周年の慶應では5月8日から「小泉信三展」。会場が図書館旧館ということは、新日曜美術館でもやった小川三知のステンドグラスも見られる。