神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

堀一郎と偽史運動(その3)


『新若人』は戦前発行された国粋雑誌だから、堀一郎が威勢のよいことを書くのはもっともなことだが、省略された部分も含め、竹内文献ムー大陸などのトンデモ系の話は残念ながら出てこない。
そこで、発想を変え、堀の蔵書目録を見てみた。『増補改訂 堀文庫蔵書目録』(成城大学民俗学研究所、平成17年3月)を見る。戦前国民精神文化研究所で同僚だった小島威彦、藤澤親雄らの本はなぜか見当たらない。小島が関与した(昨年6月1日参照)アルスの世界戦争文学全集であるアプトン・シンクレア作、浅野三郎訳『マナサス 上巻 南北戦争』(アルス、昭和16年)、坂丈緒訳『ロオランの歌−回教戦争−』(アルス、昭和16年)が目につくだけである。


戦後の著作としては、なぜか柳田國男も所蔵している松本フミ『冨士戒壇建立 第6書上、下』(明光院、昭和33年・34年)がある(4月10日参照)。金子史朗『アトランティス大陸の謎』(講談社現代新書、昭和48年)もあった。翌年の昭和49年にはなくなる堀だが、本書を読んで、かつて藤澤や仲小路彰らが提唱していたムー大陸のことを思い起こしていただろうか。


さて、『堀文庫蔵書目録』を閉じようと思っていたら、『イエスキリスト日本××××××』なる本に目が留まる。宗教学者が、キリスト教関係の本を持っていて当たり前だが、なにかあやすぃー雰囲気もある。わしは聞いたことのない本だが、メモする。その後、この本が天から降って来た。


とりあえず「はしがき」を見た。「米人考古学者ゼチヤーチヤート氏」が出てきた。ムー大陸を提唱したチャーチワードのことだね。ウルトラ大東亜トンデモ本の出現である。



追記:前回言及したナチス叢書の書誌については、昨年11月10日のコメント欄(書物奉行氏調査)参照。『文化資源学』第4号の森田朋子論文では「ナチス叢書は、1940(昭和15)年のスメラ学塾設立時にはすでに50冊以上が出版されていた」としているが、どうだろう。