神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

堀田善衛とサンカ


堀田善衛の「奇妙な一族の記録」(『文藝春秋』1956年6月号)*1にサンカ関係の凄いネタがあった。

その頃、私の家に、碁石という奇怪な姓の女中さんがいた。十七、八の若い娘であったが、これが、母の話によると、なんでも山窩の娘だということで、選挙が近づくと突然姿を消す。二三日して手足も顔も生疵だらけになって戻って来る。どこかの山奥の神様に当選を祈って来たのだという。(略)この娘の父母は、なんでも実の兄妹であるとかいうことで、娘自身も、母の諫止にもかかわらず、ひそかに実の弟と結婚し、ここで詳しくは書かないが、父母(すなわち兄妹)もこの娘夫婦(すなわち姉弟)も、ともども悲劇的な生涯を終えた。このことは、これだけでとどめておく。彼女のことを考えると、私は人生の薄気味わるさに背筋がぞくぞくして来る。


時期ははっきりしないが、堀田の父が政治家生活を送った戦前の話である。
堀田だけでなく、わしもぞくぞくするような話である。


追記:「神保町へ行こう」が始まっていた。

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「しあんくれーる」については、岡崎氏自身が言及していた。
『古本でお散歩』(ちくま文庫、2001年7月)所収の「コートにすみれを」によると、

二十歳の原点』にも登場する伝説の店「しあんくれーる」を始め、「ヤマトヤ」「BIGBOY」「鳥[ママ]類図鑑」「ろくでなし」といった京都のジャズ喫茶で流れていたジャズと、古本屋と、現代詩集は大学時代とその後にくる休閑期の私を語る三大噺となっている。


とのこと。

*1:堀田善衛全集』第15巻