神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

安くはなかった明治堂


明治堂=雑書=安いというイメージがあるが、必ずしもそうではなかったようだ。
吉野作造選集』第15巻(岩波書店、1996年10月)によると、

昭和7年2月24日 午後は大学、経済学部が明治堂から購入した明治思想史文献目録を借りて見る 猛雄君の蒐集品だ 主として経済関係のものであり中に二三の珍本もあるがコレクシヨンとしては案外不完備のものである もツと完備してる筈と思ふがマサカ別に取つてあるのでもあるまいが之れだけでは仕様がない 経済以外の文献では手当り次第集めたものでその数は殆んどいふに足らぬ それに値段の高いのに驚いた 巌松堂程ではないが慥かに一誠堂辺を凌ぐものである あんなものにあんな高価を附けるとは明治堂らしくない 思ふに猛雄君に頭がなく系統的に集めることを知らないから数の相当多きに慢心し之れだけ集めたといふところに価値ありと考へたのであらう さるにても経済学部がこの高価でやくざものを買込み之で明治研究の資料が揃つたと吹聴するに至ては滑稽の至りである 丸で盲が物を買つてゐるやうなものだ


吉野は、この年の6月に明治堂の主人三橋猛雄の結婚披露宴に招かねる*1程親しい仲だが、値付けには厳しい意見だね。