神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

一冊も売れなかった佐藤清明『現行全国妖怪辞典』(中国民俗学会、昭和10年)

先日のさんちかホールの古本市で『方言月報』創刊号?(中国民俗学会、昭和10年6月)を300円で。非売品、謄写版14頁。編輯発行兼印刷人は桂又三郎。表紙に「1」とあるので、創刊号か。岡山市立図書館が本号を、岡山県立図書館が11年1月号を所蔵。
方言に興味はないが、「編輯後記」に、

方言叢書の刊行が或は一部の者は金儲けでもしてゐる様に思ふものもあるかも知れないが事実は毎冊欠損続きである。例へば佐藤氏の「妖怪辞典」等も刊行後一ヶ月にもなるが未だ一冊も売れてゐない有様で、此処一ヶ年程は二十冊も売れゝば成績のいゝ方である。

とあるのが、面白く買ってみた。佐藤の『現行全国妖怪辞典』はさっぱり売れなかったようだが、今なら結構売れるだろうね。
本号の内容は、

鍬の土俗 桂又三郎
身辺雑記 カツラ
備前の奇習と異聞 故島村知章
蝸牛の方言 佐藤清明
津山の民謡 野田実
編輯後記

桂や佐藤や『方言月報』については、藤原与一編『方言研究叢書』第2巻(三弥井書店、昭和48年1月)所収の大田栄太郎「私の見た(経験した)特に戦前の方言研究史」に、

桂又三郎氏は今も健在の筈だが、その昔早くも「岡山方言集」とか「岡山県動植物図譜」を出した。島村知章氏も「岡山県方言集」を病と闘いながら書き、岡秀俊氏も「児島湾方言集」を出した。他に佐藤清明氏も馬鈴薯とかジャンケン方言とか蟻地獄とかいった、一種類についての全国方言資料を、克明に集めて発表した。達者でない躯をして、一層病気を侵攻(ママ)させて、帰らぬ人となったことは、学界のために一大損失であった。これら研究者たちは、「岡山文化資料」で手を握り、或は「中国民俗研究」で力を合せ、全国にもない「方言月報」さえ暫くであつ(ママ)たが出した程であった。

とあった。佐藤については、今後とも要調査だ。