神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

シルヴァン書房で関西音楽団の甲賀夢仙宛絵葉書

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四天王寺春の大古本祭りも終わった。例によって、シルヴァン書房で絵葉書をシャカシャカした。写真は、東区常盤町二丁目関西音楽団の甲賀先生・同浪江宛の絵葉書である。消印は明治43年6月28日。差出人は、森ノ宮の芳香。調べてみると、「甲賀先生」は甲賀夢仙(本名・良太郎)である。橋爪節也編著『大大阪イメージ』(創元社、平成19年12月)中の毛利眞人「“大大阪”と洋楽ーー大阪音楽協会とオーケストラ小史」によると、甲賀は明治初期の大阪で大きな役割を果たした第四師団軍楽隊の楽手だった。

楽手のうちサックス奏者の甲賀夢仙は東京陸軍教導団付属軍楽隊から大阪鎮台に赴任。明治二十四、五年に大阪市内で手風琴(アコーディオン)が流行しているのを見て取ると、アコーディオンバンド「関西鼓勇会」を組織して、他の民間楽隊と同様な活動をした。やがて人数の多くなった関西鼓勇会から吹奏楽団のパートが独立してできたのが、明治二十六年結成の中央音楽団である。明治二十七、八年の戦役を区切りに流行が手風琴から提琴(ヴァイオリン)に移ると、私塾を開いてヴァイオリンの普及に努めた。明治四十年代にはヴァイオリンやピアノ、サキソフォン、等から成る「関西音楽団」を主宰した。

また、ネットで読める塩津洋子「明治期関西ヴァイオリン事情」には、
明治16年より陸軍軍楽隊の隊員
明治21年陸軍第四師団軍楽隊が設置された際にその一員として大阪に赴任
明治25年除隊
サキソフォンの他に、クラリネットアコーディオン、ヴァイオリン等を演奏する洋楽系の音楽家だが、ヴァイオリン楽譜出版では邦楽を中心とした
ことなどが書かれている。関西音楽団の詳細はどちらでもわからない。
絵葉書の文面は、甲賀から音楽会のプログラムと切符を送られたが、流行性感冒にかかり行けなかったことへのお詫びのようだ。

大大阪イメージ:増殖するマンモス/モダン都市の幻像

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