神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

エロ・グロ雑誌編集の三冠王田中直樹

田中直樹については、武侠社で『犯罪科学』の編集長、四六書院で『犯罪公論』の編集長、実用雑誌社で『犯罪実話』の編集長をしていたことや、文化公論社*1を創業したことが判明している。ネット上には詳しい経歴が出ていないが、「「娯樂雜誌」の編輯・其他」を執筆した『綜合ヂヤーナリズム講座』第十二巻(内外社、昭和6年11月)の「講師略傳」を要約すると、

田中直樹 本名・田中直一
明治34年10月28日山口県熊毛郡田布施町*2
尋常小学三年を修業したる外学歴なし
上京後菊池寛主宰の文藝春秋社に入り、更に興文社で『小学生全集』の編輯員、編輯主任となる
武侠社で『犯罪科学』の創刊号から13号まで編輯長
四六書院で『犯罪公論』の創刊号から編輯長

この田中の武侠社を辞める前後の状況が、室生犀星の日記に出てくる。

昭和6年3月6日 田中直樹君来る。「犯罪科学」に小説と随筆依らい。

   3月24日 「犯罪科学」の「殺意」六十四枚脱稿。(略)
        久米正雄君の夢を見る。

   4月1日 「犯罪科学」稿料二百五十六円落手。

   4月17日 「犯罪科学」の随筆四十三枚脱稿、

   5月9日 田中直樹君来訪、犯罪科学を辞めたる由、僕の原稿料届けるやう依らいす。

   5月12日 「犯罪科学」稿料百六十円入手。四十二枚分。

田中は、ダイヤモンド社やクヰン社にも在籍したようだが未確認。昭和49年まで生存が確認できるが、その後の消息は不明である。

(参考)中根隆行「純文芸雑誌『文学界』誕生の周辺−文化公論社田中直樹の文化観−」『文学研究論集』16号→「http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/limedio/dlam/M36/M365845/7.pdf
    「古本夜話39」の「田中直樹『モダン・千夜一夜』と奥川書房」
    「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!? 弥吉光長・吉村貞司兄弟」(2006年10月9日
    「武侠社に関するメモ」(2007年2月10日
    「武侠社の弥吉三光」(2007年3月18日
    「武侠社の諸岡弘と吉村貞司」(2007年6月24日
    「生活社の前田広紀と六人社の戸田謙介」(2010年5月2日
    「『出版書籍商人物事典第二巻』に生活社の鐵村大二」(2010年11月30日

*1:昭和8年10月、宇野浩二深田久弥川端康成武田麟太郎小林秀雄広津和郎林房雄により創刊された『文學界』(第一次分、昭和8年10月〜9年2月)の発行所

*2:小田氏が北海道出身としている典拠が不明←末永昭二田中直樹とエログロ雑誌」『彷書月刊』2001年9月号でした。