神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

生活社の前田広紀と六人社の戸田謙介

生活社の社長鉄村大二と編輯長をしていたという前田広紀、それに生活社に統合された六人社の社長戸田謙介が柳田國男の『炭焼日記』に出てくる。

大正19年1月9日 三国書房及戸田、生活社鉄村及前田来(略)

    7月13日 るす中六人社より使来る。「国史民俗学」再版のよしいひ来る。

    7月21日 六人社戸田君来、以前一度来た林精二君同行、あれから戦に行きかへり来る。

    9月23日 戸田謙介来、「国史民俗学」の二版印税、五百二十八円持来。

  20年3月2日 先日の空襲に生活社焼け、「民間伝承」の七八月合併号大部分焼けたる由、橋浦君より報あり。

    6月28日 生活社より三十二頁の「日本叢書」を送つてくれる。自分も一冊書いて見る気になる。

   11月19日 六人社阿部君来、戸田君の処より鯉二つとゞけてくれる。活きて居る、水に放す。  

柳田の『国史民俗学』は、昭和19年3月小石川区大塚窪町一番地の生活社から刊行。再版は、同年8月神田区須田町二丁目十七番地の生活社から刊行。『民間伝承』は昭和17年5月号から六人社から刊行されていたが、これも10巻5号(19年5月)から生活社に移っている。戦時中に生活社に統合された六人社だが、敗戦後戸田は、杉並区阿佐ヶ谷に六人社を再建している。

ところで、前田だが、生活社の前は、武侠社にいたようだ。阿部次郎の日記によると、

昭和8年4月15日 前田廣紀より人情地理につき来書

    4月22日 武侠社より原稿返る

阿部は武侠社の雑誌『人情地理』1巻5号(昭和8年5月)に、「埃及訪古記」を執筆している。この前田と生活社の前田と同一人物という確証はないが、どうだろう。

(参考)先月26日2007年2月10日

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せどり師は今日も大阪あたりにいるか。

一箱古本市の「古本屋ツアー・イン・ジャパン賞」の受賞者は「古書北方人」で、次点は「古書パタリロ」、「mondo books」だったとのこと。おめでとうございました。

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今週の黒岩さんの書評は、ジェームズ・ウォルヴィン『奴隷制を生きた男たち』(水声社)。
奴隷制を生きた男たち

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竹橋の国立近代美術館工芸館で「アール・デコ時代の工芸とデザイン」展。6月27日まで。杉浦非水の図案が楽しめるほか、ペリアンの「選択・伝統・創造」展*1が出てきたりする。

*1:昨年7月6日参照。