神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

ルンペン文士?星一夫


光瀬龍の公認ファンクラブ東キャナル市民の会の機関誌『キャナリアン』9号、1979年10月所収の「ここは遠きブルガリヤ・ドナウのかなた」に、昭和20年代の終わり頃から30年代始め頃にかけて、新宿三丁目の裏にあったプロヴアンスという喫茶店の話が出てくる*1。文学青年や芸術家の卵、その崩れたのが蝟集したという。その中に、星という作家の卵がいたらしい。

星クンと呼ばれていた作家の卵がいた。卵といっても、年令は三十歳過ぎで、いつもボロボロになった文学界を一冊、かかえていた。それは二、三年前のもので、それに彼の短編小説が掲載されていた。それによって、彼だけは、星一夫という名前であることが知らされた。(略)黒の古いソフト帽に、黒い古びたオーバーを着て、背を丸めて歩いている姿などを遠くから見ると、私たちは、ほんとうの作家がそこにいるような気がしたものだ。


光瀬が昭和28年3月東京教育大学理学部を卒業して、29年4月に同大文学部に編入した頃の話である。このボロボロの文学界を抱えていたという星については、調べていないが、日本の高度成長期をどのように生きたであろうか。

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猫猫先生も使っているらしいTwitterというのはよくわからない。→「http://twitter.com/junjun1965

*1:引用は『光瀬龍 SF作家の曳航』ラピュータ、2009年7月による。