神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

中谷徳太郎と「ハッピ会」


中谷徳太郎に関心を持っていそうな人を見つけた。紅野敏郎(こうのとしろう)だ。
『遺稿集連鎖−近代文学側面誌−』*1所収の「中谷徳太郎『孔雀夫人』『三人の女に』」によると、

『孔雀夫人』につづき中谷徳太郎にもう一冊没後の本がある。これも遺稿集といってよかろう。『三人の女に』*2と題されている。(略)
この本のなかに「拳固がしやべる」という奇妙な詩が一編入っている。


 (略)
 武林無想庵谷崎潤一郎君を
 公園の染井三郎にそつくりだと言ふ。
 (略)


こういう詩を読んでいると、中谷徳太郎という一人の文学者の特異な存在がくっきりと浮かびあがってくる。宮川曼魚は、文壇の一部の連中が、気まぐれで、みなで印袢天を着て集まり、「ハッピ会」と称し、互いに酒を飲むという席ではじめて中谷に会ったと語っている。吉井勇もいたし、長田秀雄・幹彦の兄弟もいたし、岡村柿紅も万太郎も三重吉も杢太郎も鏡花もいた。


谷崎と同年の明治19年生まれの中谷だが、谷崎と会ったことはあるだろうか。

*1:雄松堂出版、2002年9月

*2:小田原書房、大正10年6月