神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

黒岩比佐子さんとヘレン・ケラー

3月13日(日)の22:00〜に、NHK教育テレビのETV特集で「思い出の街が甦る〜写真家・井上孝治の世界〜」が放送されるとのこと。黒岩比佐子さんは、次作としてヘレン・ケラーの評伝を考えていたとされるが、デビュー作『音のない記憶 ろうあの天才写真家井上孝治の生涯』(文藝春秋、1999年10月)にヘレンに関する記述がある。

中等部の最終学年である五年生だった一九三七(昭和十二)年五月、孝治は期せずして世界的な有名人に遭遇した。その年、アメリカからヘレン・ケラーが初めて日本を訪問し、四月十五日から七月九日までの約三ヵ月にわたって全国各地を講演行脚したのである。
孝治の三冊目のアルバムの中に、その時の様子を物語る写真が残されていた。福岡聾学校の校庭に一段高く演壇がしつらえられ、白い布を張った演台の上には白百合の花が飾られ、その後ろの椅子にヘレン・ケラーと秘書のポリー・トムソンの二人が並んで座っている。

ヘレンは、昭和12年4月15日浅間丸で来日。井上がいた福岡には同年5月26日から28日まで滞在、黒岩さんが取材を予定していた*1小樽には同年6月22日から23日まで滞在した。『パンとペン』の「あとがき」に「堺利彦のようにいつもユーモアを忘れず、楽天囚人ならぬ“楽天患者”として生きることで、きっと乗り越えていけるだろうと信じている」と書いた黒岩さん。次作として予定していたヘレンの著作は、既に明治40年塚原秀峰による翻訳書が内外出版協会から刊行されていて、そのタイトルは『楽天主義』であった。