神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

関東大震災と中山啓(中山忠直)の詩

東日本大震災の発生で、関東大震災時の文学者の対応が注目されているようだ。そこで、詩話会編で刊行された『震災詩集 災禍の上に』(新潮社、大正12年11月)を紹介しちゃう。「編集後記」によると、白鳥省吾、川路柳虹、百田宗治が委員となって、「この吾々の上に落ちかゝつた未曾有の災害を永遠に記念するため、現代日本の諸詩人の主として震災に関する詩作を網羅した記念出版を試み、その収得を以て此度罹災せる詩人等への救恤の費に当てることを思ひ立ち」、詩人に寄稿依頼状を出したという。その結果、ポール・クローデル秋田雨雀、生田春月、河井醉茗、兒玉花外、西條八十千家元麿、富田砕花、中西悟堂、中山啓、萩原恭次郎日夏耿之介、深尾須磨子、堀口大學、松原至大、松本淳三、三木露風、武者小路實篤、村松正俊ら49人の作品が集まった。そのうちの中山の「新鮮な首都」を見てみると、

浅草の淫売窟に猥褻にも××の如く勃起してゐた十二階が
をかしくもぽつくりと折れなえただけでも愉快じやないか
−−俺は何時も上野の丘や塔や三越の屋上庭園から
ごみごみした虱のやうな玩具細工の家並をながめおろし
一挙にこの醜悪な都が焼け落ちれば良いと思つたものだ

とある。いつか我々は、東京スカイツリーの「折れなえた」姿を見ることになるだろうか。