神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

昭和32年における大阪府の「全喫茶店・飲食店名簿」(大阪喫茶店連盟)


 田中慶一*1『大阪喫茶店クロニクル:個性に満ちた憩いのワンダーランド』(淡交社、令和6年4月)115頁に大阪喫茶店連盟の創立に関する記述がある。

 (略)大阪ミナミ喫茶飲食業組合の長も務めていた秋山氏は、東京喫茶店連盟からの要請もあって、免税点を100円まで引き上げる運動を展開。これを契機に1955年、全国喫茶店連盟が創立、同年に大阪喫茶店連盟が結成された。

 「秋山氏」は、秋山悟堂でMJB珈琲店(心斎橋)の経営者。大阪喫茶店連盟は、昭和38年4月に月刊誌『喫茶大阪』を創刊したことで知られる。平成28年9月文庫櫂から入手した『全大阪喫茶普通飲食店名簿』(昭和32年12月)も大阪喫茶店連盟発行で、編集兼発行人は、専務理事の秋山名義となっている。目次を挙げておく。

 通常この種の名簿は組合員だけの名簿のはずだが、理事長井村震一*2「御挨拶」によると、全国喫茶店連盟から全国の喫茶店普通飲食店名簿を作りたいから大阪の資料を送ってくれと言われ、すべての保健所等を廻って名簿を筆写し、『全国主要都市喫茶店名簿』が作成された。そして、その中の「大阪の部」に基づきナショナル電気製品展示会の案内状を発送したところ、「受取人不明」で返戻される率が多かった。そのため、返戻された店舗に○印をした大阪のみの名簿を再刊したのが本書だという。井村は、大阪府全域にわたり組合への加盟・非加盟を問わない全許可営業者の名簿は戦前戦後を通じて本書を以て嚆矢となすと自負している。ただ、たとえば大淀区を見ると、喫茶が10店、飲食が1店だけで、網羅的とは俄には信じられない。検証が必要だろう。『全国主要都市喫茶店名簿』もどこかに残っていれば、ぜひ見てみたいものである。
 最近、実は「書物蔵」(@shomotsubugyo)と同一人物だとカミングアウトした小林昌樹君が主宰する『近代出版研究』の第2号にロングインタビューが載る横山茂雄さん(昭和29年生)の故郷豊中市を見てみよう。生まれた岡町には、喫茶として更生とアルプスが載っている。目にしたり、通う機会はあっただろうか。
参考:「昭和34年西陣におけるカフェーと喫茶店:「全西陣料理飲食業組合組合員名簿」からー - 神保町系オタオタ日記

*1:最近刊行された『メトロノ』特別号「メトロで楽しむ純喫茶めぐり。」で取材・文を担当した。

*2:大阪駅構内商店街でステーションパーラーを経営