神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

梥本一洋『新古今その他』(マリア画房、昭和10年)をCosyoCosyoから


 四天王寺春の大古本祭りでは、開店前からCosyoCosyoの和本400円均一台に張り付いた。少し見かけて、和本の山から和本ならざる冊子・雑誌や和本の追悼本を探すのは非効率的だなと考え直して、洋本1冊200円3冊500円台へ。和本均一台では、井田太郎先生が林忠正旧蔵書を掘り出していたようだ。いいなあ。
 今回は、CosyoCosyoの3冊500円台から見つけた梥本一洋(まつもといちよう)画・佐藤梅軒編『新古今その他』(マリア画房、昭和10年5月)を紹介しよう。マリア画房については、「元美術記者神崎憲一が発行した『アートグラフ』創刊号(マリア画房、昭和26年)ーーマリア画房の高野敏郎と新京の大陸美術社もーー - 神保町系オタオタ日記」で言及したことがあって注目している出版社なので購入。国会図書館サーチ、美術図書館横断検索や「日本の古本屋」の出品記録*1でヒットしないので、梥本の研究者に知られていない画集かもしれない。と思ったら、『朱雀』第14集(京都文化博物館、平成14年3月)の大西基子「梥本一洋作品年譜」で本書によって185番から209番まで25作品をリストに加えているので、文博か遺族の元にあったのだろう。一洋は、明治26年生まれの日本画家で、昭和27年享年58で逝去している。
 目次と《夕山風》を挙げておく。

 「序」は、上記エントリーで経歴を紹介した神崎憲一の執筆である。それによると、

(略)一洋氏が、特に嘱されて新古今集を主題とした扇面二十四帖の揮毫を完成したのを機とし、是れを介した梅軒主人が記念の為めに、其一部と因みに描かれたものを纏めて一堂に展列した事は、好画学画の有縁の士には素より、時しも民族主義的思想流行の秋、一般人士の関心も亦尠なからぬ事であつたと思ふ。其機微を察して、マリア画房主は其印影を冊子に刊行する事と成り、所縁の故を以て茲に蕪雑の記文を敢てするに至つた事、省みて忸怩たらざるを得ないものがある、爾云。
 昭和十年四月満洲皇帝入京の日
                洛東吉田山麓樫檜草堂にて
                  神     崎     憲     一     

 文中の「梅軒主人」は本書の編輯者佐藤梅軒で、「梅軒画廊 | 京都で遊ぼうART ~京都地域の美術館、展覧会、アート系情報ポータルサイト~」によると大正5年創立で現在も四条烏丸にある梅軒画廊の創立者である。昭和9年秋に梅軒画廊で開催された展覧会*2に出品された作品の印影をマリア画房が昭和10年5月に刊行したことになる。値段の記載はなく、何部印刷してどのように頒布したのだろうか。

*1:「日本の古本屋」の初期設定で「在庫ありのみ」にチェックされているので、それを外して検索すると売り切れた本も表示される。

*2:平成13年10月2日~11月4日に京都文化博物館で開催された展覧会の図録『梥本一洋展:京都画壇・王朝文化美を描く』(京都文化博物館、平成13年10月)の「年譜」に記載はない。