
11月?の「たにまち月いち古書即売会」で、古本横丁が和本均一400円台を終了した。私が主に和本ならざる雑誌や小冊子を掘り出していただけに残念である。出店自体はその後も続いているので、和本均一を止めたのは体調の具合ではなさそうである。
さて、最後の和本均一から1冊だけ購入。書影を挙げた『光琳新撰百図 上』である。光琳が目当てではなく、「大典記念工業図書館」印が押されていたからである。

「洛陽高校」の消印が押されていたので、京都市立洛陽高等学校の後身である洛陽工業高等学校の校史『洛陽工高百年史』(京都市立洛陽工業高等学校創立百周年記念事業協賛会、昭和61年12月)を見た。そうすると、京都市立第一工業学校時代の事業として記載がありました。
図書館といえるものが設けられたのは、昭和三年(一九二八)年である。その年、天皇即位御大典記念事業として、学校では工業図書館設置が企画された。北教室の東端にある元の訓育室が、図書館にあてられた。狭くて薄汚れた一室だったが、初めて図書館として書棚や閲覧机が整備されたのであった。
「記念工業図書館」は校友会図書と在京知名人の寄贈図書により、蔵書がととのえられた。(略)
図書部よりの移管図書は二七三冊、寄贈図書は一、九七七冊であった。初代の館長は国語科教諭・吉沢武夫であった。
昭和天皇の即位大典を記念して全国各地に新設・増設された図書館の一つであった。
入手した『光琳新撰百図 上』には、刊記がなく発行所や発行年は不明である。「国書データベース」で検索すると、戦前主に3種刊行されたようだ。刊年不明及び元治元年版 *1、芸艸堂の慶応元年発行版、松本貞蔵他の明治24年発行版である。このうち後者は、国会デジコレ等で調べると本書末尾にある鶴の屏風2丁分が欠けているので除外できる。また、デジタルで見られる奈良女子大学学術情報センター所蔵の中者とは表紙の柄が異なるようだ。なお、同センター所蔵の下巻の刊記を見ると発行所は「芸艸堂合名会社」で明治24年創業で現存する芸艸堂であった。刊記の「慶応乙丑年冬十一月」は実際の発行年月ではなく、元版の発行年月ということになる。
実は古本横丁には下巻も出ていて某氏が入手したものの既に売却してしまったそうで、刊記の記載が不詳である。いずれの版にしても、上下揃いなら「日本の古本屋」にいい値段で出ている和本を均一台に放出した古本横丁。もうあの均一台を漁れないとは、残念である。


*1:池田孤村の元治元年序により元治元年刊としているか。