逃した獲物は大きかった。文庫櫂のガラスケース内にあった柳田國男『遠野物語』の初版は、店で売れなかったのでヤフオクに出されて売れたという。店にあることは以前から聴いていたが、手が出ない値段だろうし、今更『遠野物語』の初版を見ても新知見を得られないだろうとスルーしてしまった。
しかし、考えてみれば同書は350部の限定版で限定番号が記載される上、旧蔵者が分かる印・書き込みがあったかもしれない。しかも、店売りでは6万円位のつもりだったという。貧乏なわしでも、6万円だったら清水の舞台から飛び降りるつもりで、買っちゃえる値段ではある。逃した獲物は、大き過ぎ。
売れたという話を知ったのは、実は2年前である。今頃話題にするのは、原本遠野物語編集委員会編『柳田國男自筆原本遠野物語』(岩波書店、令和4年1月)が刊行されて、佐々木喜善宛限定番号1番の写真を見て、思い出したのであった。
この限定番号については、石井正己『遠野物語の誕生』(ちくま学芸文庫、平成17年8月)263~267頁に確認できた分が記載されている。要約すると、
1号 佐々木喜善
2号 柳田國男
6号 松岡鼎
22号 早稲田大学図書館
39号 井上通泰
40号 桑木厳翼
50号 戸水寛人か
52号 帝国図書館
70号 南葵文庫
103号 京都高等工芸学校
239号 胡桃沢勘内
258号か 芥川竜之介
282号 南方熊楠
291号 周作人
更に、菊地暁先生が関西の図書館所蔵分を「人文研探検―新京都学派の履歴書(プロフィール)―| 菊地 暁(KIKUCHI Akira)」で報告されている。要約すると、
101号 京都府立図書館
107号 京都大学経済学部図書館(河上肇旧蔵)
109号 大阪大学附属図書館(本庄栄治郎旧蔵)
170号 天理大学附属天理図書館
267号 佛教大学図書館(西田直二郎旧蔵)
306号 大阪府立中之島図書館
338号 京都大学人文科学研究所図書館(内藤湖南旧蔵)
自分で買えないまでも、菊地先生に文庫櫂に『遠野物語』があると教えてあげればよかったですね。そこまで気が回らなかった(´・_・`)