大阪市立図書館は蔵書が充実している上、大阪とは縁もゆかりもない京都府民のわしにも貸し出してくれるので、よく利用している。ここには橋爪節也「新大阪KEYわーど 大阪を知るための100の言葉とモノの世界」を連載中の『いちょう並木』(大阪市教育委員会)が置かれていて、これを貰うのも楽しみである。
さて、同誌の最新号で橋爪先生の連載第20回は、「こんなアイディアどないだと競いあう趣味人、趣味家、本気のしゃれ文化」である。宝船を描いた絵を交換、頒布した大阪の趣味人、趣味家のグループ「浪華宝船交換会」の話である。昭和4年の第1回から昭和15年頃まで続いたという。
同会のルールは次のようなものだった。
会員は個性溢れる「宝船」を制作する。会員同士の交換会の後、節分に「宝船」の頒布所を設け(他の会員と共同でも良い)、紹介状をもらった人が、御朱印のように市内各所に散らばった頒布所を巡って「宝船」を集めるのである。第1回の頒布所は34個所だったが、第4回には74個所に増え、「宝船」も111種類が用意された。
この浪華宝船会案内の第3回分(昭和6年2月4日)を昨年知恩寺の古本まつりで、玉城文庫から入手している。550円。頒布者は100名、頒布所は71個所である。幹事は木村旦水(だるまや)、三宅吉之助(宇津保文庫)、梅谷紫翠(甘汁庵)、芳本倉多楼(清三洞)、粕井豊誠(久宝亭)、川崎人魚洞(巨泉)の6人である。旧蔵者は藤村芝山で、紹介者は人魚洞であった。この藤村は不詳だが、「ざっさくプラス」によると、「附録趣味旅行会記事」(177号、昭和10年2月)など『風俗研究』に3編寄稿している。江馬務が主宰する風俗研究会の会員だったと思われる。
ちなみに、大阪歴史博物館が宝船のコレクション(大阪歴史博物館:コレクション:館蔵品ギャラリー:民俗:宝船コレクション)を所蔵している。先日行ってきたら、田中緑紅作かとされる絵が展示されていた。
追記:『上方』118号(創元社、昭和15年10月)掲載の同月23日杏林温故会・大阪史談会・上方郷土研究会共催で開催された適塾址見学・講演会の出席者芳名簿に藤村の名が見える。