神保町系オタオタ日記

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高木彰彦『日本における地政学の受容と展開』(九州大学出版会)に藤澤親雄とスメラ学塾

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 藤澤親雄大正14年日本において最初に地政学を紹介したと、「情報官鈴木庫三とクラブシュメールの謎(その16) - 神保町系オタオタ日記」で言及したところである。ところが、高木彰彦『日本における地政学の受容と展開』(九州大学出版会、令和2年3月)の「第二章日本における地政学の受容」に、「久武哲也や柴田陽一によって新たな指摘や見解が出された」とある。柴田先生の方は、地政学関連文献のデータベースを作成して、チェレーンの『欧州戦争と民族主義』(邦訳大正6年)や『現代の八大強国』(邦訳大正7年)等が、これまでの地政学紹介よりも早いことを指摘しているという。勉強になりました。 
 最初高木著の人名索引を見て藤澤親雄はあるが、小島威彦や仲小路彰がないので、スメラ学塾は出てこないだろうと思っていた。ところが、読んでいたら「第三章戦時期における地政学の展開」の注に出てきた。

(32) 戦争文化研究所は哲学者で思想家であった小島威や中小路彰らによって形成された外郭団体で、後に「スメラ塾」という思想運動を展開した。『皇戦』や『日本百年戦争宣言』などの高嶋の著書も戦争文化研究所から刊行されている。

 スメラ学塾に言及していただくのはありがたいが、塾名や小島、仲小路の名前が間違っている。校正をしっかりとしていただきたい。もう一つ補足しておこう。131頁に「敗戦後小牧は公職追放されたが、その理由は大日本言論報国会の理事を務めたことのようである」とある。『公職追放に関する覚書該当者名簿』によれば、小牧実繁の該当事項は、「大日本言論報国会理事著書」である。