神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

寸葉会では東亜同文書院教授林源三郎宛榊原紫峰の絵葉書ーー国画創作協会第3回展覧会出品《奈良の森》ーー

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 寸葉会では、「ひげ美術」が1枚100円で大量の使用済絵葉書・官製葉書を出すので、これも楽しみ。絵葉書のコレクターは裏面の絵ばかり見る(当たり前だ)が、私は表面の宛名や発信者に注目して購入している。この大正9年12月5日付け絵葉書は、戦前上海にあった東亜同文書院の先生らしき林源三郎宛なので買ってみた。
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 『創立四拾週年東亜同文書院記念誌』(上海東亜同文書院大学、昭和15年6月)によれば、林は大正7年12月から昭和6年3月まで教授であった。絵葉書の文面は、申し越しの絵葉書を漸く送付するというもの。裏面は、榊原紫峰が国画創作協会第3回展覧会に出品した《奈良の森》である。別便で絵葉書を送るという記載はないので、林はこの紫峰の絵葉書を発信者の「藤□□郎」に頼んでいたのだろう。
 原田登編『帝国大学出身録』(帝国大学出身録編輯所、大正11年4月)によれば、林は、京都市に原籍を有し大正3年京大法科大学政治科を卒業し、大阪貿易語学校教授を経て、東亜同文書院教授に就任している。紫峰も京都市出身なので、何か接点があるのかどうか。絵葉書を送った発信者の素性も不明。吉田近衞町は京大の近くで、また、当時は周辺に京都市立美術工芸学校や京都市立絵画専門学校があった。「藤□」は、画材店かもしれない。中々1枚の絵葉書に秘められた謎を解くのは難しい。
 なお、南丹市立文化博物館では「没後50年岡村宇太郎展」と「国画創作協会の画家たち展」を開催中である。行きたいが、ちょっと遠いかな。
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