神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

「飯尾哲爾と『土のいろ』展」の図録を元「貸本喫茶ちょうちょぼっこ」の古本市で貰うーー遠州の柳田國男こと飯尾哲爾ーー

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 平成29年6月大阪で元「貸本喫茶ちょうちょぼっこ」の4人による古本市があった。古通豆本等を買えたが、無料本が何冊か置いてあって、その中にあった1冊。平成6年2月~3月に浜松市立中央図書館で開催された「飯尾哲爾と『土のいろ』展」の図録(浜松読書文化協力会・浜松市中央図書館、平成6年2月)。多分展覧会場で無料で配られた物であろう。しかし、所蔵館が稀で「日本の古本屋」にも出品がないので、このような貴重な冊子をただで入手できるのはありがたいことであった。
 飯尾は未知の人物だったが、昭和56年3月8日逝去後の新聞に「“遠州柳田國男”飯尾さん死ぬ」との見出しがついたという。よい子はみんな持ってる『昭和前期蒐書家リスト』(トム・リバーフィールド、令和元年11月)にも「郷土研究『土のいろ』発行」と出ている。図録から、経歴を要約すると、

明治27年6月2日 静岡県浜名郡曳馬村生
大正2年 浜松中学校卒。静岡師範学校入学
同3年4月 静岡県浜名郡可美尋常高等小学校に正教員として勤務
同10年4月 同郡曳馬尋常高等小学校に転勤
同11年12月 本杉亮平らと浜松子供協会を創立。会は童話・音楽・郷土研究・文芸の4部からなる。
同12年 浜松子供協会が『花火』を創刊。童話や子供の綴方等を掲載
同13年1月 浜松子供協会が『土のいろ』を創刊
昭和10年4月 曳馬西尋常小学校初代校長
同14年1月 『浜松童話』創刊。浜松子供協会は浜松放送局からの依頼で「遠江郷土かるた」を放送
同15年 用紙節約のため特高から『土のいろ』発行停止を命じられる。
同16年 富塚国民学校
同18年 追分国民学校
同21年3月 退職
同24年頃 布橋幼稚園園長
同30年~33年3月 同名誉園長
同30年8月 『土のいろ』復刊1号刊行 
同35年 曳馬農協理事
同44年10月 『土のいろ』「遠州子供の遊戯」(114号)で終刊
同56年3月8日 逝去

 『土のいろ』は、遠州地方の民俗、歴史、自然等を網羅しているが、
・大正15年「浜松土俗玩具号」(16号)
昭和2年遠州七不思議考」(19号)
・同年9月柳田國男が「蟷ろう*1考」を寄稿した22号
昭和3年「七不思議落葉集」
昭和6年東条操「静岡県方言の重要性」掲載の「方言特集号」
昭和11年「鴨江見世物特集」(70号)
が面白そうである。昭和56年から63年にかけて「ひくまの出版」から復刻版が刊行されている。全12巻と別巻・索引で、関係者の証言が載った「月報」も付いているというから、ぜひ見てみたいものである。

*1:虫偏に良