神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

『出版月評』(月評社)に図書館記事を書いたのは誰だ?

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最初の出版物批評の専門雑誌とされる『出版月評』は、明治20年8月から24年8月まで40冊刊行された。全冊の復刻版も出ているし、私が奈良の朝倉文庫(2月に閉店)で買った日本近代文学館編『復刻日本の雑誌』(講談社)による創刊号復刻版もある。『日本近代文学大事典』第5巻によると、高橋健三、陸実(羯南)、杉浦重剛ら日本派の人々が呼びかけて発刊された。更に「書評のほかに内外出版界、印刷や図書館関係の記事、新聞雑誌の発刊状況や外国書目の紹介を載せ、さらにそれまで内務省図書課から発行されていた「出版書目月報」を引継ぐ形で、内務省への納本による「出版書目」を毎月巻末に収載した」とある。
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「図書館関係の記事」とあるが、創刊号を見ると確かに「東京図書館及大坂[ママ]書籍館の来観人」*1が載っている。無署名だが、東京図書館大阪書籍館の人口比による来館者数や1人当たりの閲覧冊数を比較している。また、東京図書館について、数年前は新聞・雑誌・稗史小説の類を慰み半分に借読する人が多数だったが、近頃は「其求むる所の利益を書巻中より領取せんと勤むる真の来館人大分に居るを見」とし、特に洋書閲覧数の増加に注目している。東京図書館の事情に詳しい人が書いたようだ。月評社当初の社友は次に挙げる56人である。
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依田百川(学海)、坪内雄蔵(逍遥)、中村正直、中邨秋香、井上円了など錚々たる名前が並ぶ。執筆したのはこの中の誰だろうか。

*1:目次には「東京図書館大阪書籍館来館人の比較」とあるが、本文の記載に拠った。