神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

古書からたちで未知の早稲田大学出版部PR誌『早稲田出版月報』を知る

今は平野の杭全(くまた)神社傍にある古書からたちがまだ移転する前に買った『早稲田出版月報』。書物蔵さんも知らなかったので珍しい物か。もっとも早稲田の古書現世に「よく見ますよ」と言われちゃうかもしれない。『神保町が好きだ!2018』の「出版社・書店等PR誌一覧」(飯澤史生)にも記載されていないので、記録しておこう。

昭和3年4月号(同月15日発行)32頁
 新刊と近刊
 喜多一重「我国の金融と景気 服部文四郎氏の近著(国民新聞掲載)
 早稲田大学出版部発行図書一覧表
昭和3年6月号(同月15日発行)30頁
 清沢洌ラッセルの『産業文明の前途』塚越菊治氏訳」(東京朝日新聞掲載)
山口剛「坪内逍遙博士鑑選『近世実録全書』」
 早稲田大学出版部発行図書一覧表

内容は自社出版物の書評と発行図書一覧だけなのであまり面白くはない。昭和3年4月号に第11年第4号とあるので、大正7年1月創刊かもしれない。その後先月の全大阪古書ブックフェアで古書鎌田の300円均一コーナーから5冊も発見。発行時期が近接しているし、どちらも大阪古書組合加盟店なので出所は同一かもしれない。古書鎌田から入手したのは、

昭和3年11月号(沙翁記念完成号、同月15日発行)32頁
 逍遙「沙翁全集第四十巻『シェークスピヤ研究栞』を書くに到つた所以」など
昭和4年1月号(同月15日発行)32頁
 「一九二九年を迎へて」、吉江喬松「羅馬の夕日」(吉江『南欧の空』抜粋)など
昭和4年4月号(同月15日発行)32頁
 森田亀之助「森口多里君の近著 美術概論」(国民新聞掲載)など
昭和4年9月号(同月15日発行)28頁
 戸島紀光「実際教育の立場から見たる皇室新論」、本間久雄「高安月郊氏の近業『日本文芸復興史』を読む」、田中王堂「杉森の哲学 杉森孝次郎氏の近業『綜合倫理学』を読みて」など
昭和4年11月号(同月15日発行*1)28頁
 五十嵐力「純正国語読本の上梓に就てーー主として教育家諸氏にーー」、岩崎勉「佐藤慶二著「現象学概論」を読む」など

編輯兼発行者は昭和4年4月号までは種村宗八、同年9月号は武田尾吉、同年11月号は石野元蔵。『早稲田大学出版部一〇〇年小史』(早稲田大学出版部、昭和61年10月)によれば、早稲田大学出版部の前身東京専門学校出版局は明治19年発足、明治35年早稲田大学出版部と改称。『早稲田出版月報』に関しては言及してないようだ。ただ、大正7年1月出版部は組合会議を開き匿名組合組織から株式会社に変更することを決議し、主事種村を通じて大学の承認を求めたとあるので、そのあたりの動向と同誌の発行は連動しているのかもしれない。

早稲田大学出版部100年小史

早稲田大学出版部100年小史

*1:奥付は昭和4年9月15日発行と誤植