神保町系オタオタ日記

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金港堂発行の雑誌『和国新誌』とはーー稲岡勝『明治出版史上の金港堂』のゲスナー賞受賞を祝してーー

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稲岡先生の『明治出版史上の金港堂 社史のない出版社「史」の試み』(皓星社)が第8回ゲスナー賞「本の本」部門で銀賞を受賞したとのこと。おめでとうございます。同書については、「稲岡勝『明治出版史上の金港堂』(皓星社)にならい出版史料を発見 - 神保町系オタオタ日記」で既に紹介したところである。受賞記念に同書には出てこない金港堂発行の雑誌『和国新誌』についてアップしよう。
稲岡著には、金港堂が発行した雑誌として、明治21年創刊の『文』や『都の花』、明治34年から35年にかけて創刊の七大雑誌(『教育界』『少年界』『文芸界』『少女界』『軍事界』『青年界』『婦人界』)などを挙げている。最近、偶然金港堂発行の未知の雑誌に関する記述を『内藤湖南・十湾書簡集:内藤湖南生誕一五〇年記念』(鹿角市教育委員会平成28年8月)に見つけた。明治22年11月6日付け内藤湖南から父の内藤調一(十湾)宛で、「方今の雑誌は先に日本人御覧然るべきか此頃金港堂より出候和国新誌もよろしからん其他は大阪の経世評論鳥尾の保守新論是等也是に国民の[ママ]友を併せて見れば大によろしかるべしと存候」とある。『和国新誌』という雑誌は、国会図書館サーチやCiNiiではヒットしない。同誌は「此頃」出たとあり、また『日本人』は明治21年4月、『経世評論』は同年12月、『保守新論』は22年1月創刊なので、22年頃創刊されたのだろう。謎の雑誌だ。
追記:蔵書印さんの御教示により、おそらくは明治期出版広告データベースの「明治期出版広告データベース詳細画面」に出てくる『利国新誌』だろうと判明。CiNiiでは『利圀新志』(明治22年10月創刊)として挙がっている。