神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

玉城文庫から『家庭之友』(金の鳥社)の終刊号をーー戦争と婦人雑誌の統廃合ーー

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京都の古本まつりで絵葉書、チラシなどの紙もの御三家と言えば、シルヴァン書房、京都スターブックス、玉城文庫だろうか。特にシルヴァン書房(矢原さんの方)が出すいわゆる「寸葉品」は量が多く、シルヴァン書房でシャカシャカ漁ると疲れてしまうので、私はできるだけ後回しにしている。しかし、日本絵葉書会の面々や徳島の某氏は当然真っ先にシルヴァン書房から見ているようだ。
さて、先日の下鴨納涼古本まつりで、玉城文庫の3冊500円コーナーに戦前の『家庭之友』(金の鳥社)がまとまって出ていた。『婦人之友』の前身の雑誌と同題だが無関係である。内容はタイトルから想像する婦人雑誌というより宗教雑誌であまり面白いものではない。中を見て、写真であげた「廃刊に就て」に惹かれて昭和16年10月発行の終刊号1冊だけ購入。
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内容は加藤咄堂「正しき日本」、野口里城「皇室と仏教」、高島米峰「戦争と仏教」。高島のから引用すると、

殊に、日本の仏教は、日本の仏教であつて、印度の仏教でもなければ、支那の仏教でもない。全く純国産仏教である。故に、苟くも国家の意志が戦はうとする時にこれに背らふやうには出来てゐないが、天皇の勅令を畏みて火の中へでも水の中へでも飛び込むやうには出来てゐる。(略)

戦争協力というほどのものではないが、昭和16年という時局を如実に感じさせる文章である。そうした時局のもと、本誌は雑誌の統廃合により廃刊となった。この時期の雑誌の統廃合については、近代女性文化史研究会『戦争と女性雑誌ーー一九三一年~一九四五年ーー(ドメス出版、平成13年5月)の三鬼浩子「戦時下の女性雑誌ーー一九三七~四三年の出版状況と団体機関誌を中心にーー」に詳しい。これによると、『婦人之友』、『家庭之友』、『友のたより』、『珠算研究』、『東南風』が『婦人之友』に統合されている。また、「『家庭之友』の廃刊に就て」には「今回婦人雑誌の統合問題となりこれ迄百種以上もありしものを十種に廃合する」とあるが、三鬼論文では77冊の女性雑誌が18冊に統合されたようだ。
『家庭之友』の発行人飯塚哲英について触れておこう。何年か前の下鴨で三密堂から200円で買った『仏教年鑑』昭和13年版(仏教年鑑社、昭和13年4月)の「現代仏教家人名録」から要約すると、

飯塚哲英 
号夢袋、曹洞宗
東京市牛込区弓矢来町154中央仏教社
明治23年3月27日秋田県
曹洞宗大学卒
中央仏教社、金の鳥社、大日本仏教少年団本部、大楠公夫人婦徳顕揚会を創立
月刊雑誌は『中央仏教』『大乗禅』『家庭之友』『銃後の婦人』の4種を発行

『銃後の婦人』は、三鬼論文によれば『洋裁春秋』に統合されている。
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戦争と女性雑誌―1931年~1945年

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